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Open Letter は、アーツ千代田 3331 への移転後の最初の企画展として、是恒さくら個展『沖語り - オキガタリ - 』を開催します。
広島県出身の是恒さんは、アラスカ州立大学を卒業後、2015 年より山形県に移住、今年 3 月に東北芸術工科大学大学院修士課程を修了しました。現在は、山形県上山市の共同アトリエ「工房 森の月かげ」で制作活動を続けています。
是恒さんは、現代社会で見過ごされがちな地域の古くからの習わしや文化を取り上げ、現地での丹念なフィールドワークとインタビュー取材を行い、テキストとともに刺繍や織物、立体作品、それらをまとめた冊子として作品をつくっています。
本展では、宮城県石巻市の網地島に暮らす元漁師の古老から聞いた昔話を基につくられた『空想玩具シリーズ』を中心に展示します。
このシリーズは、世界各地の玩具には漁や狩猟の作法を小さな遊びから教えるものがある、ということをヒントに、是恒さんが網地島で聞いた多様な海の生き物との体験談を後世に伝えるための想像の玩具を作るというもので、素朴でユーモラスな造形と、添えられたテキストの活き活きとした語り口がとても魅力的です。
その土地で語り継がれる世界観を空想を媒体に再び語り、共有し、思いをはせること。異なる時代、土地の日常とひとつの地平でつながろうとすること。そうした是恒さんの作品を、ぜひご覧いただければと思います。
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本展によせて
浜辺に立ち、遠く沖を見渡す。つま先を誘うように、小さな波が寄せては返す。
頬にまとわりつく潮風を吸い込むと、海はほんの少し、わたしに入り込む。
目の前に広がる海のなかでは、無数の生き物たちが上へ下へ、北へ南へと動き続けているはず。どこかに彼らが姿をあらわさないかと、海面に目を凝らす。
数年前から、海辺のまちを訪れては、そこに暮らす人たちの話を集めてきた。
生涯、漁師として生きてきたおじいさん。生まれた時からずっと、海を見てきたおばあさん。鯨を捕っていた人、食べていた人。
わたしが遠くに見ていた沖を、ずっと近くに知っている人たちだ。
そんな人たちの話す言葉を集めて、反芻しながら沖を眺めると、手の届かなかった海の世界は饒舌に語り出した。
沖を知る人の、物語 ― わたしの出会った「沖語り」に、かたちをもたらし語り直します。
是恒さくら
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是恒さくら
1986年広島県生まれ。山形県在住。アラスカ州立大学フェアバンクス校で絵画を学んだ後、2015年に山形県に移住、東北芸術工科大学大学院にて地域デザイン研究を専攻(2017年修了)。「記憶の中に留められた思いにかたちをもたらすこと」をテーマに、様々な土地を訪れ、丹念に集めた言葉やイメージをもとに制作を続けている。
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