<スケジュールに関するお知らせ>
アーティスト:黒田アキ、ジャン=リュック・ヴィルムート、片野まん、藤原康博、中山玲佳、河合政之、黒川彰宣、柴田主馬、山崎康、設楽恵里
黒田アキの作品に「風」をテーマにした作品がある。 黒田の「風」とは、物質である絵画を別の何かにかえるものであった。フィリップ・ラクー=ラバルトが 黒田の絵画について以下のように書いている。
「そして突然、奇跡のようにサイクロンの〈目〉がやってくる。奇妙な静けさ(四方では嵐が荒れ狂っているのに)。青空が見え、もはや何も動こうとしない。 つまり荒廃のなかの休止だ。そしてこれこそが絵画の時間、まさにそのときなのだ。」
黒田の絵画において描かれる「イメージ」、「フィギュール」はもちろんそのようにしてたちあらわれる。
ハ ハ また 「不均一核生成」という物理現象がある。水は理想状態で考えるなら 0°で凍るが、現実的には0°になってもなかなか凍らない。ただ、ある刺激を水溶液面に与えると、瞬間的に結晶化する現象である。 ハ作品のタイトルにもなっているメCRYSTAL HAZARDモについて黒田は、「何かちょっとした核のようなものが水の中に生成された瞬間に不意に、予期せず、 その水が一瞬にして凍ってしまうようなものを表現している」と語っているが、 絵画における「フィギュール」は、このようにしてあらわれるというのが黒田の一つの思考であろう。これはフィリップ・ラクー=ラバルトの語るものにも重なってくる。
黒田の絵画にconti/nuit/éというタイトルの作品『連続のなかの夜 nuitéがある。黒田の絵画は台風の目のように静まりかえっている。 ハしかしそれはあくまで、生成と混乱のさなかに、不意に訪れた「休止」でしかない。線が「縺れた」ところに、「フィギュール」としての「夜 nuit 」がある。 ハしかし、それは縺れたままではない。「夜」が終わりを告げるとともに、縺れた時間が動き出し、また「風」が吹き始める。そこで凍った海は溶け出し、 縺れた糸は解けていく。
そうした繰り返しのなかで、「蕩う」のではなく、「滔々と流れつつ」も時に「瞬時に生成し、あらわれる」のが黒田の「フィギュール」である。
今回はその黒田アキのコンセプトに触発されたモリユウギャラリー森裕一が他のアーティストとこのテーマについて語り作品を選択し「Garden」に模した展覧会となっている。
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