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透きとおる海、紺碧の空、隆起する緑の丘......といった、観光広告にみられるような、ホンモノの情景を撮ったウソのように美しい写真は、見飽きた紋切り型のイメージとして氾濫してる。ホンモノの大自然を前にして、その既視感によって白けてしまうことさえある。
池田晶紀の水草水槽写真はその逆に位置する作品だ。水槽は水槽として撮られ、水草はそのスケールを誇張なく伝えている。情景はこどもの描く風景のようにあっけらかんとして、カラフルな光の演出は神秘的なイメージにはとどかず、どこか微笑ましい。その不器用につくられたジオラマを、池田の視線は「理想の自然/夢の情景」として映す。
はじめて水草水槽写真を見たとき、予想に反してそこに発見したのは、それまでの池田作品に見られる虚構性とは異なる「自然」だった。自然の情景がリアルに再現されていたわけではない。驚くような仕掛けがあるわけでもないし、目を見張るような魚が泳いでいるわけでもない。ただそこには、池田が思い描いたであろう、理想の「明るく大きな自然」が素直にあった。実際の自然界には存在しないであろうが、ジオラマの造形と写真撮影という二重の人工によって描き出される、もう一つの現実が。
途上のバランスの上に存在していた「DOUBLE NATURE」が、どのような展開を向かえるのか注視したい。
菊地敦己(アートディレクター/本展キュレーター)
池田晶紀|Masanori IKEDA
写真家
1978年横浜生まれ。
1999年自ら運営していた「ドラックアウトスタジオ」で発表活動を始める。2003年よりポートレート・シリーズ『休日の写真館』の制作・発表を始める。2006年スタジオ「ゆかい」設立。2010年スタジオを馬喰町へ移転。オルタナティブ・スペースを併設し、再び「ドラックアウトスタジオ」の名で運営を開始。国内外で個展・グループ展多数。アーティスト三田村光土里とのアートユニット「池田みどり」としても活動。
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