<スケジュールに関するお知らせ>
この度Gallery OUT of PLACE TOKIO は、11-12月期の展覧会として山本優美による「コロモガエ outgrow」展(陶、立体造形)を開催いたします。
山本優美はこの10年間、自身の思い出のこもった衣類や家族や友人が着ていた衣服を、柔らかい陶土を手作業で彫り込むことで写し変え、完全焼成したのちセラミック作品として完成させ発表して来ました。彼女の執拗なまでの観察眼と卓越した手わざは、柔らかくて軽いものがそのまま硬くて重いものでもある「逆転の一瞬」を表現することを可能にすると同時に、彼女自身が私たちが知るカメラとは全く別の、ある「写真装置」として存在していることを知らしめて来たとも言えるでしょう。
2017年の春、山本は初めての子供を出産し、現在は子育てに忙殺されながらも、現代美術家として精力的に制作し続けています。「母」としての生活は、当然のことながら彼女の中に新しいテーマをもたらし、昨年来制作された作品にその兆しが徐々に現れているように思えます。彼女自身が新しい「山本優美」を模索する姿は、過去の殻を一旦脱ぎ、あたかも羽化しようとする蝶にも重なります。今回の個展では、作家として、そして作品としてまさに今変化しつつある「衣」を潔く公開しようとしています。この機に是非ご高覧ください。
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Artist statement
衣服の皺や襞を自らの手で表現してみたいと最初に思ったのはいつだっただろうか。ポンピドゥーセンターでルイーズ・ブルジョワの大理石の襞を見たときだったか、ヨーロッパで目にした宗教画の中の衣服の夥しい皺襞との出会いだったか。柔らかく、息を吹きかけただけでその形を変えて移ろいゆく布への憧れはもっと以前からあったのかもしれない。しかし私は布を作る者にはならなかった。布は私たち人間の生命といつも共にあった。私たちに最も身近な布のひとつは間違いなく衣服だろう。
私には焼き物との出会いもあった。土(粘土)は人間が手の中から、世界に関わる何らかのかたちを生み出そうとする時の、根源的な素材のひとつだと強く感じている。ざらざらとした土の肌やひび割れといった生々しい表情を見せる焼き物は、触覚など私たちの身体感覚を呼び覚ましてくれる実存的な媒体である。肌身に近く持ち主の記憶を宿しながら儚くうつろう布の皺襞を、脆さを抱えながらも与えられた形象を記憶し続ける陶に私の身体を通じて手作業でうつしとる行為には、日々溢れかえる情報に翻弄され、自分の存在が希薄にさえ感じられる現代において、私たちの存在の核となる微かな感覚を、手ざわりのある確かなものへ定着させたいという、私自身の無意識の欲求が潜んでいるのかもしれない。
文:山本優美
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